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マリーの希望の体現者であり、彼女の欲望に火をともすことにもなるサーシャには『コーカサスの虜』のセルゲイ・ボドロフ・ジュニア。キエフでの生活に限界と絶望を感じ、自らの運命を切り開くため、一途に信念を貫く彼の姿は、みずみずしい若者の息吹きを感じさせる。また、マリーとのラヴシーンで覗かせるナイーヴさや、クライマックスの遠泳のシーンで見せる逞しい男性的な魅力は、今世紀を担う美青年スターの登場と、すでにヨーロッパ中の女性たちから熱い眼差しを注がれており、日本でも人気をよぶのは必至だ。
アレクセイとサーシャ。そんな好対照な魅力を持った男性像も、本作のもうひとつの見どころとして、日本の女性たちの視線をとらえて放さないことだろう。
また、青年時代のセルゲイを演じるエルヴァン・ベノーは、94年の『ザ・マシーン/私のなかの殺人者』でジェラール・ドパルデューの息子を演じて名子役として知られ、新作にサミュエル・ル・ビアン主演の歴史アクション大作「狼たちの契約」“Le pacte des loups”に出演するなど、将来有望な若手俳優である。フランス人の母とロシア人の父との関係に心を引き裂かれる一人息子を誠実に演じ、深い印象を残す。
そして何よりもこの映画の中で圧倒的な存在感を示すのが、近年、レオス・カラックスやラース・フォン・トリアーら気鋭の若手監督の野心作で、チェレンジ精神を失わない大女優の貫録を見せつけるカトリーヌ・ドヌーヴだ。『インドシナ』以来のコラボレーションとなるヴェルニエ監督曰く、「ドヌーヴのために書いた」というガブリエルは、尊大さの中に深い人間性と強烈な信念を持った女優像として、トリュフォーの名作『終電車』で彼女が演じ、当たり役になったレジスタンスの舞台女優マリオン・シュタイナーを彷彿させる。偶然ながら、『終電車』では彼女自身がふたりの男性に愛される女性を演じていたわけだが、本作ではアレクセイとサーシャに愛されるマリーの精神的な柱として登場。出番は僅かながらも要所を締め、スクリーンに現われるだけで有無を言わさない毅然とした威圧感は、ドヌーヴをおいてほかに考えられない堂々たる風格だ。クライマックスの逃亡劇で醸し出すサスペンスでも、さすが大スターの貫録を遺憾なく発揮している。
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