冷戦時代、ロシアの大地に、祖国を思いながら、自由を求めて、激しい愛の日々を生きたフランス人女性がいた。

『インドシナ』『フランスの女』と、激動の20世紀の歴史の中で、苛酷な運命を生き抜くヒロインの姿を、スケール豊かなロマンティシズムをみなぎらせて描く名匠レジス・ヴァルニエ監督の最新作『イースト/ウエスト 遙かなる祖国』は、冷戦時代のソヴィエトを舞台に、愛と自由に生きたフランス人女性の勇気ある姿を、製作費12億円の巨費を投じて謳いあげた壮大な叙事詩大作だ。

『フランスの女』を撮り終えたレジス・ヴァルニエは、これまでとはまったく違うタイプの映画を作りたいと、中央アジアを旅したときに、歴史の影に忘れ去られた人々の物語を知る。それは、スターリンの恩赦を信じ込み、ロシアに帰国した亡命者たちが、“西側のスパイ”と疑われ、無差別に処刑され、強制収容所へと送られてしまった事実だった。ヴァルニエは当時の記録を調査していく中で、現在カザフスタンに住んでいるフランス人女性の証言に着想を得て、フランス人のマリーとロシア人のアレクセイという夫婦像を創作。危機的状況に直面したとき、彼らの関係がどのように変化していくか、無償の愛のかたちとはどういうものなのかをテーマに物語を構築。撮影に際しては、実際にウクライナのキエフで大掛かりなロケを敢行し、こうしてヴァルニエ自身「これまでの私の作品の中で最も野心的」と証言するように、時代のリアリティを感じさせるドラマティックな映像世界を見事に作りあげた。