|
−−最初、懸念を感じませんでしたか、これまでのあなたの“家族”には属していない、未知の監督と仕事をするということは?
「ちょっとした心配があったにしても、それはあっという間に消え去ったわね。初めてレジスと会ったとき、本当に気持ちよく時間が過ぎていったの。儀礼的な退屈さなどまったくなかったわ。いろんなことを話したわね、そう、映画以外のことを。レジスは彼の家族について少し話し、私は私の家族のことを少し話したの。そのときは、それだけで別れたのだけれど、話すことはまだまだあると思ったの。生活や人生について、具体的ないろいろなことを。初めて出会って、こんなに打ち解けられるなんて驚くべきことよね。それ以来、本当に心が軽くなり、レジスのことをうまく理解できるだろうと感じたの」
−−レジス・ヴァルニエは、あなたに対して心配を抱いたことを隠していませんでしたよ。というのも、それまであなたは彼の映画世界とは別なところに属していたのですから。『イースト/ウエスト 遙かなる祖国』のような一般観客向けの映画に出演するなんて、珍しいでしょう?
「そんな心配をするなんて、レジスは間違っているわ。私は、作家主義とそれ以外というように、映画を二つにジャンル分けする考えは好きじゃないのよ。それは、ある種の俳優をひとつのシステムに閉じこめようとする考えだわ。私は“作家の映画”に身を捧げようなんて気持ちはこれっぽっちもないし、もちろんジャック・リヴェットと仕事をするときは、あの上映時間の長さと独特の語り口を持ったスタイルだもの、作品が商業的に大きな成功を収めるなどとは思ってはいないわ。けれど、(クロード・)シャブロルや(クロード・)ソーテ、(アンドレ・)テシネたちと映画を撮るときは、その映画が出来るだけ大きな成功を収めて欲しいと願っているわ」
−−レジス・ヴァルニエが言っていたのですが、あなたの映画の趣味はとても選別的だというのは本当ですか?
「観客に媚びを売るような映画が嫌いっていうのは本当よ。お涙頂戴や、いたずらに感覚を刺激するような映画はね。でも、とてもロマンティックで、一見して一般的な映画の中にも好きな映画はあるわ。最近ならば、『シベリアの理髪師』は大好きだった。私が50人ぐらいの観客へ向けて作る映画しか好きじゃないなんて思わないで欲しいの。映画は豊かな広がりを持った芸術であり、観客のためにあるものだから」
−−あなたのキャリアにおいて、『イースト/ウエスト』はひとつのステップになるものだと思っていますか?
「もちろんよ。私のように、望もうが望むまいが、作家主義の映画家族の一員に類別されている女優にとっては、“超大作”の映画に出ることは、なにがしかの意味があるのよ。けれど、プロデューサーにとってはある種のリスクを抱えることになるわけね。レジスはこの作品に私を起用することは容易な判断ではなかったことを隠さなかったわ。おかげで、彼がどれだけ私のことを気に入ってくれたかが、良く判ったの」
−−この作品のどこに一番魅かれたのですか?
「役よ。レジスは本当に素晴らしい贈り物をしてくれた。一人の人物で、これだけたくさんのものを表現できるなんて、女優にとってはめったにない機会だったわ。物語は10年に渡り、そこに感情のあらゆる形態が姿を見せるの。喜び、悲しみ、あきらめ、別離、孤独、優しさ、そして愛。シャブロルの『嘘の心』を除けば、恋する女、一人の男のために闘う役を演じる機会なんて、めったになかったわ。レジス・ヴァルニエとの出会いは本当にタイミングがよかったの。おかげで私は、演技の仕事を別な可能性へと導くことができたわ。この映画が他の監督たちに、違う私のイメージを与えることができたら本当に嬉しいわね。演技をすることで、いろいろな楽しみを持てたらと思っているの。一般的な映画を閉めだしているわけではないのよ。ただ何か面白いものを語る映画でありさえすればいいの。それがコメディであれ、スリラーであれ、メロドラマであってもいいから、強烈なテーマが欲しいのよ」
−−あなたにとって出演作の選択基準は、まず監督の人柄だと思っていましたが?
「と言うより、それを含んだものね。物語とその語り口が、別なものになるとは考えられないから。リヴェットは3時間の映画しか作れない。それと同様に、レジス・ヴァルニエなら、ロマンティックなテーマが好きということ。それと感情の大いなる動き、その空間を持っていること。彼は自分に似た映画を撮る監督だわ」
|