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その頃、フランスの国立民衆劇場がキエフ公演に訪れた。マリーは自分たちの置かれた状況を伝えるのに絶好の機会と、大女優のガブリエル・ドヴレ(カトリーヌ・ドヌーヴ)に掛けあい、囚われの身であること、ここから脱出したいことを訴え、窮状を記した手紙を託す。開幕前、満場の観客の前で、フランス語で西側向けのプロパガンダの祝辞を述べたアレクセイの姿は、マリーにとって裏切り以外の何ものでもなかったからだ。さらにマリーは、アレクセイから新管理人オルガ(タチアナ・ドギルヴァ)との浮気を告白され、彼を部屋から追い出してしまう。
2ヵ月後、ウィーンで開催される水泳の全欧選手権の予選で、サーシャは激しいデッドヒートの末、勝利を手にした。その夜、マリーとサーシャは男女の一線を越える。しかしサーシャの荷物の中に、ウィーンのフランス大使館宛の手紙が潜んでいることが判明し、サーシャは出場資格を剥奪、黒海のキャンプに送り込まれてしまうのだった。
数ヵ月後、マリーはサーシャから、オデッサからトルコの船に密航する計画を打ち明けられる。しかし、手引きをするはずの男が行方不明となり、サーシャは6時間を掛けて、約20キロ離れたブイまで泳ぐのだという。前代未聞の無謀なこの計画に、マリーは「自殺行為よ!」と止めるが、彼の決意は堅かった。「僕の人生だ、好きにさせてくれ」。荒波にもまれ、息も絶えだえのサーシャだが、死を賭けたこの危険を見事に乗り越え、フランスに辿り着く。そしてガブリエルの尽力で、カナダ亡命を果たすのだった。しかしマリーは、サーシャを唆したスパイとして、国家反逆罪に問われ、強制収容所送りとなってしまう。
6年後、マリーが収容所から釈放された。しかし迎えに来たアレクセイと14歳に成長したセルゲイ(エルヴァン・ベノー)がひと目で彼女と気づかないほど、マリーは変わり果てていた。精神的にも肉体的にも深い傷を受け、「愛は終わったわ」と呟くマリーを、アレクセイは「僕たちに終わりはない、心から愛している」と抱きしめるのだった。
それから2年後、アレクセイは共産党の幹部となり、マリーやセルゲイを引き連れて、ブルガリアのソフィアを訪れていた。その頃、ブルガリアのフランス大使館では、ガブリエルがマリーたちの亡命の手配を済ませていた。こうしてマリーは、この10年のアレクセイの地道な戦いの真実を、ようやく知ることになる。そしてそれは、アレクセイとの別れを意味していた。夫の無償の愛の深さを噛みしめ、躊躇するマリーだが、「行くんだ、必ず会える、約束する」というアレクセイの言葉を信じて、彼女はセルゲイとともにフランス大使館へ駆け込むのだった。
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