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あなたの歌がパトリス・ルコントの映画にインスピレーションを与える……。すごい出会いですね。

アラン・バシュング(以下AB)「パトリスがあなたにもそう言ったのですね、“外”が『フェリックスとローラ』の発想のもとになったって。私には信じられなかったのですが……。
そうなんです、非常に感動しました。私は直接にはパトリスのことを知りませんでしたが、彼の映画はたくさん見ています。いろんなジャンルの映画に挑戦する彼が好きです。『レ・ブロンゼ』シリーズはコメディ映画のちょっとした古典になったと思っていますし、『タンデム』は大好きです。
あの映画は、ラジオのクイズ番組とともに田舎の町を渡り歩く二人の好人物の、心揺さぶる切ないバラードになっていると思います。マスコミのスターではなく、毎日毎日、絶えずつらい役回りを引き受けている二人。彼らは自分たちの仕事を本当に愛しているのです。
映画の終わりごろにとても素晴らしいシーンがあります。ロシュフォールが、ちょっと呆然とした様子で海岸に佇んでいて、周りを白い鳥が飛び回っているのです。彼はとうとう気が狂ってしまったのか、それとも新しく生きていく力を身に付けたのか……ルコントは台詞のないひとつの映像を見せているのですが、そこにはまったく別の物語、別の映画を生み出すような力があるのです。自らの語り口、ストーリーの流れをいささかも変えず、それでいてデカルト的な過剰な説明を避け、含みを持たせるという才能を彼は持っているのです」


『フェリックスとローラ』のストーリーの発想のもとになった、“外”という歌はどのような内容なのですか?

AB「ひとつのアルバムの中で、ある曲が別の曲とこだましあうということがよくあるのですが、《軍隊幻想曲》というアルバムの中に、“俺たちみんなそうなのか”という曲があり、それは恋とか仕事に夢破れ、孤独に生きることを決めた、また世間から引っ込んで生きることを余儀なくされた人たちのことを歌っています。
そしてこれに応えるように、“外”は、ひとりの人間が暗い時期をくぐりぬけた後、頭をもたげ、もう一度人と交わり、世界と向かいあおう、リスクを恐れずにもう一度やってみようと決心する瞬間を歌っています。“外で野ウサギがメスを追いかけている。みんなが外へ飛び出していく。そしてこの孤独な部屋に別れを告げる。一人寝の部屋をキャンセルするのだ。俺は出て行く。そして雑踏に紛れ込む。窮屈になると覚悟して、鳥のように枝に止まるのだ。身を寄せよう……”。
また、動物保護、地球の温暖化、人口過剰ということも連想しました。身を寄せあわせよう、お互い助けあわなければならないだろう、ということです。まあスポット写真を並べたような効果を狙ったのですが、それがまたパトリス・ルコントの興味をひいたのですね。彼はこの歌を映画のために再録音するよう、私に頼みました。あまり作らないようにして、ダンスホールで歌うようにという注文だったのです」


しかし、一曲の歌がこれほど美しい話を生み出すというのは、素晴らしいことだと思います。

AB「ときどき手紙を受け取ることがあるのですよ。私の歌がインスピレーションを与え、こういう絵になったとか、こういう文章になったとか、書いて送ってくれるのです。
私はひとつのテーマから出発しますが、いつも他の感情、考え、印象が付け加わってくるものですから、聞く人が自分の歌にしてしまえるのです。私は何かを押しつけるというのは好きじゃないですからね。独裁者にはなれないんですよ!」


あなたの歌で踊りながらカップルができるということも?

AB「名前だってそうですよ!“娘をジョゼフィーヌとかガービーと名づけました”ということを聞きます。嬉しいですね。昔吹き込んだ曲につけたタイトルの名前が、こうしてまた思いがけずに過去から甦るなんて、本当に嬉しいことです」

普通、歌手というものは、スクリーンで歌手を演じるのは嫌がるものですが、あなたがこの役に魅かれた理由は何でしょう?

AB「このところ歌わない役でけっこう映画に出ているのですよ。だから歌手の役が気になるということはなかったですね。
この男は歌手ですが、同時に独自の人間性があり、ローラの過去から浮かび出てくる、ある種のちょっと暗い影を漂わせていると思いました。それに彼は彼女に向かって、かなり意地悪なことを言ったりするのです。
“ローラ、君が問題なのは、人を愛したことが一度もないということなんだ……”と。
ひとつの役には、いつもどこか“他人のために手を汚す”という感じの要素がくっついてくるものですが、特に悪役を演じるということは、観客にその悪の効果を活き活きとしたものに見せることだと、私は思います。映画は人間が持つニュアンスのすべてを描き出すものだと思います。心の優しさから狂気までのすべてを。私は手を汚す役、いわばゴミ清掃をする役。私たちの中にある、あまりきれいじゃない感情を扱うというのは、かなり名誉なことに思えるのです」



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