物  語

 マギーは、夫とシャーロットの関係に言い知れぬ不安を抱き始めていた。しかし確たる証拠を掴めないまま、それを口に出すことをためらってるのだと、ファニーに打ち明ける。そしてマギーは、彼女とともに父親の誕生祝いのプレゼントを買いに出かけ、偶然にもシャーロットとアメリーゴが結婚式の3日前に立ち寄ったブルームズベリーの骨董品店で、あの“金色の盃”を買い求めるのだった。
 数日後、屋敷に“金色の盃”を届けに来た骨董店主は、飾られた写真を見て、かつてこの盃を買い求めたのはシャーロットとアメリーゴだったこと、そしてふたりはお似合いのカップルに見えたことを告げる。さらに、この盃はキズものなので、代金は半額でいい、とも。
 アメリーゴとシャーロットの関係を知っていて黙っていたと、マギーはファニーを責めるが、同時にそのことを父に知られないよう、嘘をついて欲しいと彼女に頼み込む。そして、ファニーはアメリーゴの不貞の証拠をもみ消すように、わざと盃を落として、粉々に砕き割る。しかしそこへ、アメリーゴが現われた。結婚前からのシャーロットとの関係を、5年もの間、隠していたと叱責するマギーに、アメリーゴは「僕が必要なのは君だ。今までよりも」と本心を打ち明ける。そんな夫に、マギーはこう言い放つのだった。「私が欲しいのは、ヒビのない幸せよ」。やがて、アメリーゴの愛情のこもった手紙に、次第に夫に対する信頼感を回復していくマギー。

 一方のシャーロットはアメリーゴの態度が、にわかに変わったことに敏感に気づく。「何か言われたの」と問いつめるシャーロットに対して、アメリーゴは「あれは過去のことだ。昔の出来事だよ」と、やんわりはぐらかす。そして、マギーとの愛を貫くことを決めた彼は、ヴァーヴァー氏の庇護から離れて、ローマで暮らすことを決意するのだった。一方のヴァーヴァー氏も、マギーのたっての願いを聞き届け、愛娘の幸せのため、シャーロットとともにアメリカに戻ることにする。そして本格的に美術館着工に乗りだすのだ。  ヴァーヴァー氏の膨大な美術コレクションが、アメリカ行きの船に運ばれる準備が着々と進む中、いよいよ進退窮まったシャーロットは、「私は今日にも、身ひとつであなたと出ていけるわ」とアメリーゴに決心を迫るが、彼は「もう昔とは違うんだ。彼女についた嘘を消し去るのに一生かかるだろう」と最後通牒を突きつける。そして「これは“恥”なんだよ」というアメリーゴに、シャーロットは平手打ちをくらわせ、彼の前から姿を消した。

 数日後、ヴァーヴァー氏の美術コレクションを、観客に説明するシャーロットの姿を、冷ややかに見つめるマギーとファニーがいた。その声に潜む悲痛な叫びに哀れみを感じたマギーは、シャーロットの自尊心を守るため、ある“最後の嘘”をつく。  その夜、悲嘆の涙にくれるシャーロットは、ヴァーヴァー氏に抱きしめられ、そして美術品とともにアメリカへと旅立っていくのだった。