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−−主要人物のひとり、アダム・ヴァーヴァーは伝説的な美術蒐集家ということになっています。映画の中では、どういった類の蒐集品に設定したのですか? 「撮影に使った屋敷に、実際の美術品を彼のコレクションとして使いましたが、付け加えたものもあります。イギリス中部のラトランド州にあるベルヴォワール城は、主要な撮影現場のひとつですが、そこには実に充実したギャラリーがあり、プッサン、ホルバイン、またゲインズボロウやテニヤーズの作品があります。ヴァーヴァーのコレクションとしては、本当に相応しいものでした。カトリックであるアメリカ人のコレクターが買い集めそうなものです。どちらかといえば形式にのっとった芸術作品なのです。ほかに私たちが付け加えたものとしては、ラファエルの素描があります。もちろん複製ですが。ジェイムズの時代には、こうしたルネッサンス時代の重要作家のスケッチなどは、まだ手に入れることができたのです。ヴァーヴァーのモデルには、 J・ピアポント・モーガンやヘンリー・クレイ・フリック、そしてイザベル・スチュワート・ガードナーといった、著名なアメリカ人の優れた美術蒐集家があげられます」 −−撮影はすべてロケ・セットですか? 「そうです。ベルヴォワール城や、リンカンシャー州のバークレイ・ハウスのほかに、ミドルセックスのサイオン・ハウス、ロンドンのマンション・ハウスで撮影しました。またロンドンのランカスター・ハウスでは仮装舞踏会のシーンを撮りました。エドワード朝の室内装飾を持つサイオン・ハウスでは、撮影監督のトニー・ピアース=ロバーツはアナモルフィック(歪曲)・レンズを駆使して、サージェントの絵そっくりの、かすんだような背景を作りあげています。黒や白、ピンクという色で引き立たせた原色に近い黄色と黄土色は、彼の絵を思いおこさせずにはいられないはずです。イタリアではアルテーナのボルゲーゼ宮殿、アルソーリのマッシモ城でロケしました。イタリアではルネッサンス時代のシーンがフラッシュバックであり、ボルゲーゼ宮殿は16世紀の簡素でいかめしい雰囲気に、まさにぴったりでした」 −−仮装舞踏会について話していただけますか? 「当時、仮装舞踏会は大流行だったのですが、その中で最も有名だったのが、1890年代にロンドンのパークレーンの館でデヴォンシャー公爵夫妻が催した、いわゆるデヴォンシャー・ハウス舞踏会なのですが、映画の仮装舞踏会はそれに基づいて演出しました。撮影に使ったランカスター・ハウスは大戦の被害を免れた数少ない館のひとつで、最近、政府によって修復されたものです。映画の撮影に使われたのは、『金色の嘘』が初めてです。このシーンには150人以上のエキストラが出演しています」 −−『金色の嘘』はヘンリー・ジェイムズ作品の映画化としては三作目になりますが、これからも彼の他の小説を映画化する予定はありますか? 「いえ、私は『金色の嘘』でジェイムズの世界は描き尽くしたと思っています。もうこれ以上、何も付け加えるものがないという感じなのです。ちょうど、サージェントがある時期になって、もう肖像画は描くまいと決心した心境に似ています。肖像画が彼を有名にしたのですが、彼はもう充分にやったと思ったのです。それ以降は何か軽く気の張らない作品を作ろうと、水彩画に向かったのですが、その水彩画は実に素晴らしいものです。私も何かそのようなことを、これから映画でできれば幸せだと思っています」 |
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