俳優として確実な成長を遂げる一方、これまで劇団を作ったり、本を執筆したりと、その世界を広げてきたイーサンの新しい世界がここに完成した。ソニーpp100デジタル・カメラを使って、チェルシー・ホテルでのロケを敢行。16日間で早撮りした。「デジタル・カメラを使うと本の執筆や絵画を描くのと、同じような感覚で映画が撮れる。監督業はこれからも続けたい」と意欲満々。長年の友人二コール・バーデッツが86年に書いた戯曲の映画化で、バーデッツ自身が脚色を担当している。 芸術世界での成功を夢見ながらも、その夢の大きさにおしつぶされそうになっている住人たち。ひりひりするような孤独に向き合い、心の奥では純粋な愛を求めながらも、愛に臆病になっている都会人。その心の痛みが、近年、脚光を浴びるポエトリー・リーディングのスタイルで描かれ、まさにデジタル時代の抒情詩と呼びたい作品が生まれた。劇中では実際にホテルに住んでいたディラン・トーマスなどの詩も引用される。
 詩人になるのを夢見るヒロイン、グレースを演じるのは、「パルプ・フィクション」の人気女優ユマ・サーマン。私生活上のイーサンと彼女は“おしどりカップル”として知られるが、昨年、ふたりの間には2番目の子供も誕生し、ハリウッドのベスト・カップルといわれる。「ガタカ」の共演が縁で結ばれたふたりだが、一緒に組む作品は慎重に選んできた。今回、監督&女優という形で、「チェルシーホテル」での共作が実現。「ここでは特に彼女の繊細な部分を見せたかった」とイーサンは語るように、ショートカットにラフなロングスカートというファッションを身にまとい、他の映画では見せたことのない快活さと影のある女性を細やかに演じた。
<< BACK   NEXT >>