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映画では複数の主人公たちの日常生活が、それぞれのホテルの部屋でとらえられる。詩人になる夢を抱きながらも、ホテルのバーで働く美しい女性、グレース。彼女にひそかに思いを寄せながらも愛に踏み出す勇気のない画家のフランク。ミネソタからボブ・ディランのようなミュージシャンになるのをめざして出てきたテリーとロス。破滅志向を持ち、酒と女に目がない熟年作家のバド。バドを愛しながらも、彼とは幸せな生活が送れなかった妻グレタ。心からの愛を求めながらも、それを得ることができなかったバドの愛人マリー。つつましい生活を送りながらも、愛と詩を見つめる若い黒人女性オードリー、彼女への愛と悪い仲間への忠誠心との間で揺れ動くナイーブな青年テリー。そして、クラブで歌うベテランのジャズ・シンガー、スキニー・ボーンズといつも廊下やエレベーターで謎めいた詩を朗読するディーン。
彼らはこのホテルに住み、四方を古い壁に囲まれた部屋で過去の亡霊たちと向きあいながら、現代のニューヨークで生きている。「チェルシー・ホテルにはゴーストたちが住んでいる。だから、この映画を使って、ゴースト・ストーリーを作れないかと思った」とイーサンは今回の映画についてコメントしているが、この初監督作品で、実在した過去の偉人達の幻影を登場人物達に重ね合わせながら、現代と過去のボヘミアン魂が交差する場所としてホテルを使い、伝説の場所の幻想的な雰囲気を見事に映像化してみせる。影響を受けたというヴィム・ヴェンダースの監督作やドグマ宣言による「セレブレーション」などの手法も巧み取り入れる。
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