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25 Mai 2003 ■映画祭情報(Report-Yuko TANAKA) カンヌ2003:受賞結果 速報! CANNES 2003 : PALAMERS! |
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5月25日、12日間に渡って開催された第56回カンヌ映画祭が閉幕、モニカ・ベルッチの司会の元、パトリス・シェロー審査委員長から各賞が発表になった。コロンバイン高校の銃撃事件をヒントに得た詩的ドキュメンタリーといえるガス・ヴァン・サント監督の“ELEPHANT”がパルムド−ルと監督賞とダブルで獲得。そしてトルコ人監督NURI BILGE CEYLANの“UZAK”、カナダ人監督デゥニ・アルカンの『 バルバロイの侵略』“LES INVASIONS BARBARES”もそれぞれ2部門を受賞。もちろん3作とも上映時から下馬評は高かったのだが、ちょっと片寄ってしまった感が。そして最も呼び声が高かったラ−ス・フォン・トリアー監督の“DOGVILLE”、国別では最多の4作品が選ばれたフランス映画が無冠に終わってしまったことが論争の的になるのは必死。また男優賞を受賞したMUZAFFER OZDEMIRは4月に交通事故でなくなっており、残りの二人も閉幕式に欠席していたので、式自体の盛り上がりも欠けてしまった。 各受賞作品 <公式コンペティション> ※()内はプレゼンテータ− パルムド−ル(イザベル・ユペール) “ELEPHANT”(ガス・ヴァン・サント監督/アメリカ) グランプリ(スティング) “UZAK”(NURI BILGE CEYLAN監督/トルコ) 監督賞(ジェラルディン・チャップリン) “ELEPHANT”(ガス・ヴァン・サント監督/アメリカ) 脚本賞(ヴァレーリ・ブルーニ=テデスキ) 『 バルバロイの侵略』“LES INVASIONS BARBARES”(デゥニ・アルカン監督/カナダ) 男優賞(エリザベス・ハーレイ) M. EMIN TOPRAK & MUZAFFER OZDEMIR (“UZAK”) 女優賞(フィリップ・ノワレ) マリー・ジョゼ・クローズ(“LES INVASIONS BARBARES”) 審査委員特別賞(ジュディット・ゴードレッシュ) 『午後5時に』“A CINQ HEURE DE L'APRES-MIDI”(サミラ・マクマルバフ監督/イラン) カメラ・ド−ル(ジャンヌ・モロー&ヴィム・ヴェンダース) “RECONSTRUCTION”(クリストファー・ボー監督/デンマーク) 特別賞:“OSAMA”(DSEDIGH BARMAK監督/アフガニスタン) <短編部門> パルム・ド−ル “CRACKER BAG”(グレンディン・イヴィン監督/オーストラリア) 審査委員特別賞 『頭のない男』“L'HOMME SANS TETE”(フアン・ソラナス監督/フランス) <ある視点部門> アルタディ賞 “LA MEGLIO GIOVENTU”(マルコ・チュリオ監督/イタリア) 最初の視点賞 『多くの月日』“MILLE MOIS”(FAOUZI BENSAIDI監督/モロッコ) 審査委員特別賞 『血と金』“SANG ET OR”(JAFFAR PANAHI監督/イラン) <その他> FIPRESCI国際批評家賞 公式コンペ:『父と息子』“PERE ET FILS”アンドレイ・ソクーロフ監督/ロシア) ある視点:“AMERICAIN SPLENDOR”(SHARI SPRINGER BERMAN&ROBERT; PULCINI監督/アメリカ) 監督週間:『一日の時間』“LAS HORAS DEL DIA”(JAIME ROSALES監督/スペイン) アート&エッセイ映画館組合AFCAE賞 “OSAMA”(DSEDIGH BARMAK監督/アフガニスタン) エキュメニック賞 『午後5時に』“A CINQ HEURE DE L'APRES-MIDI”(サミラ・マクマルバフ監督/イラン) 教育映画賞 “ELEPHANT”(ガス・ヴァン・サント監督/アメリカ) 青少年賞 『多くの月日』“MILLE MOIS”(FAOUZI BENSAIDI監督/モロッコ) カンヌ・ジュニア賞 “OSAMA”(DSEDIGH BARMAK監督/アフガニスタン) 映画監督組合「黄金の馬車」賞 クリント・イーストウッド |
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24 Mai 2003 ■映画祭情報(Report-Yuko TANAKA) |
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公式上映の最終日、河瀬直美監督の「沙羅双樹」がラストを飾ったことにちなんで、今回はいつもとちょっと変えて日本映画の反響をリポート。まず最初に登場したのは三池崇史監督の「牛頭」。フランスでもそのクレイジーなストーリーと映像表現でファンを着実に増やしているが、カンヌはこれが初お目見え。4日目にあたる17日土曜日の夜10時に登場したのだが、期待を裏切らない三池節に会場は大熱狂。公式コンペの盛り上がりが今一だった時だけに、「パルムド−ル候補!」と発言する観客も現れるほど。来年はコンペ入りを狙ったりして!3日遅れて登場した黒沢清監督はフランスでは「キュア−」「カリスマ」から既に安定した評価を得ている数少ないアジア人監督の一人だが、今作は振るわず。期待が高かったせいか、各メディアの評価はかなり厳しいものに。しかしこれも常連監督が背負う宿命なのかも知れない。そして河瀬直美監督。1996年に新人監督に与えられるカメラ・ド−ルを受賞した彼女は、昨年の夏にパリの美術館ジュ・ド・ポームドキュメンタリー全作品が上映されるなど、熱狂的ファンを隠し持つ存在。「蛍」が正式に上映されたことがないフランスでは、久々のフィクションでコンペに選出を事前に話題を呼んでいた。説明を削り取ったストーリー、ドキュメンタリータッチだが同時に詩的な映像世界は彼女独特のもの。「もしかしてブーイングが起るのでは?」と少し心配したが、観客の反応は穏やか。スタンディング・オーベーションも長く続いた。彼女の私的な表現はどこかフランス人のそれに通じるものがあるのかもしれない。さあ、とうとう明日はフィナーレ。カンヌっ子の今晩の話題は「パルムド−ルはどれだと思う?」で決まり! |
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23 Mai 2003 ■映画祭情報(Report-Yuko TANAKA) |
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週末に入り、4部門中、まず最初に幕を降ろしたのは批評家週間。21日付けでレポートしたジュリー・ベルツッチェリ監督の『オッターが去ってしまってから』“DEPUIS QU'OTAR EST PARTI”が見事にグランプリを獲得。開催地であるフランスがトップで賞を取ったことで面目躍如、フランス映画ファンにとってもうれしいニュースとなった。そこで今回はカンヌにおけるフランス映画の全体を眺めてみると、公式コンペ、ある視点、監督週間を通して、ある一つの傾向が見られた。『ティレジア』“TIRESIA”、新人女性監督クレール・ドヨンの『ライオンの子』“LES LIONCEAUX”、アラン・ギロディー監督の『勇敢な人たちに休息はない』“PAS DE REPAS POUR LES BRAVES”、ユージェーヌ・グリーン監督の『にぎやかな世界』“LE MONDE VIVANT”などは、台詞の言い回し、演出、美術などに演劇的な要素が強く、またそれぞれの監督固有の表現方法が全面に出ている通常の映画としての物語性から離れた「不思議な作品」であった。この傾向にはアルノー・デプレシャン監督の『「男たちと一緒に」を演じながら」』“ EN JOUANT DANS LA CAMPANIE DES HOMMES”、マチュー・アルマリック監督の『国家』“LA CHOSE PUBLIQUE”、そしてクロード・ミレール監督の後半部分など、映画自体の生成過程にスポットをあてた作品群にもあてはまることかも。これらの作品では、監督自身が内面的世界にどんどん閉塞していってしまう懸念も。これは最近の新しい監督に特に顕著。確かに新しい試みをしていくことは興味深いし大事なこともしれない。けれど、純粋に観客の心を打つような作品が減ってしまっているようで、ちょっと寂しい感が残った。 |
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22 Mai 2003 ■映画祭情報(Report-Yuko TANAKA) |
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公式上映も残すところ、あと3日。そろそろパルム・ド−ル予想が白熱化。今のところ、業界紙の発表する世界の批評家の判定の平均ではラ−ス・フォン・トリアー監督の“DOGVILLE”がトップをキープ。しかし唯一、反アメリカ的と海の向こうから大バッシングを受けてしまった。次に人気の高いのはトルコ人のNURI BILGE CEYLAN監督“UZAK”。少ない台詞と長回しで理想と現実のギャップに悩む主人公のカメラマンと親戚に当たる青年を描いた物語。重苦しい作りの作品だが、最後にストーリーをまとめあげていく行程は監督の熟成された力量を認識させる。しかし、やはり笑いも誘う心あたたまるヒューマン・ドラマも必要?と3位にランクインしたのは『 バルバロイの侵略』“LES INVASIONS BARBARES”(デゥニ・アルカン監督)。死を迎えた父親の元に集まった家族の繋がりをセンスのよいユーモアでちりばめ、人生のクライマックスをポジティヴに受け入れる希望を与える作品に仕上がっており、会場を和やかなムードに包んでいた。日本勢から登場したのは、フランスでの評価が既に安定している黒沢清監督の「明るい未来」。しかし今作は「作品に入り込めない」という意見がちらほら。文化の違いのせいなのか、皆が一番疲れている1週間経過時の上映というハンディがたたったせいなのか?そしてビンセント・ギャロの監督第2作めにあたる“BROWN BUNNY”。恋人を失ったバイクレーサーのセンチメンタルなロード・ムービーなのだが、自作・自演、彼独自のセンスが溢れる決め決めの映像と音楽、そしてラストのハードなシーンのせいか、評価は賛否両論まっぷたつに別れてしまった。数字的には今のところワーストを記録。しかしこれが彼のアーティストとして宿命なのかもしれない…。 |
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21 Mai 2003 ■映画祭情報(Report-Yuko TANAKA) |
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マーケットもほぼ終了、また平日で観光客も少ないせいか、ぐっと静かになった感のあるカンヌだが、まだまだ熱いのがジャーナリストたち。コンペ作品の上映は土曜日まで続くので全く息を継ぐ暇はなしなのだ!フランスの業界紙ル・フィルム・フランスは国内の主要な批評家の、アメリカのスクリーン誌は世界各国の採点を掲載しているのだが、毎朝この項目をチェックするのが映画祭参加者の日常とまっている。 さてフランス映画は?というと、選出作品発表の記者会見10分前にコンペ入りが決まったベルトラン・ボネロ監督の『ティレジア』“TIRESIA”が公式コンぺに登場。美貌の性転換者が誘拐され監禁されるが、薬が切れてしまったために抑えていた男性ホルモンが現れ始め、目をえぐりとられ森の中に捨てられてしまう。そこに通りがかった娘の献身的な介護を受けるが、予知能力を身につけていた…という、なんとも寓話的な作品。公式上映ではなかなか長いスタンディング・オーベーションだったが、どうもフランス人の中での内輪受け的な印象が。ある視点部門は女性監督ソルヴェイグ・アンパッシュ“STORMY WEATHER”。これが第2作目になる彼女はエロディ・ブシェーズ演じる精神科医とアイスランドの寒村に住む女性患者を中心とした「人の結びつき」と「現実」を描いた作品。女性らしい繊細さを持った作りと、「リード・マイ・リップス」も担当したアレクサンドル・デスプラの音楽が印象に残る作品。しかし、二人の主人公を執拗に追うようなカメラはダルデンヌ兄弟風?と思ったら、実は彼等が製作に絡んでいました。監督週間に選ばれた俳優マチュー・アルマリックが監督した『国家』“LA CHOSE PUBLIQUE”は2002年の大統領選を題材にした自身の作品製作と私生活の行き詰まりを描いた作品。マチュー・アルマリック自身の現実とオーバーラップするちょっと自虐的な内容だが、30代フランス人の政治との関わり方、愛情生活の考え方が垣間見れる。そして批評家週間で上映された『オッターが去ってしまってから』“DEPUIS QU'OTAR EST PARTI”(ジュリー・ベルツッチェリ監督/フランス・ベルギー)は、グルジア共和国からフランスに出稼ぎに行った男性オッターの死を母親に隠す娘と孫の物語。キャストもストーリーもとっても地味な作品なのだが、登場人物の感情描写を極端すぎず、丁寧に描いた心を打つ作品。こんな作品に出会えるのもカンヌの幅の広さかも。 |
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■マーケット情報 刺激の少なかった今年のカンヌ....来年に期待 |
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クストリッツァやタランティーノ、ウォン・カーウァイの新作が製作が間に合わず、刺激的な作品が少なかった今年のカンヌ。蓋を開けてみると結局ラース・フォン・トリア-の“Dog Ville”が広く批評家受けしているのに留まっている。マーケットの方も大手各社は派手に買付けに動いていたが、小さな配給会社は慎重に作品を選んでいるに違いない。映画祭期間中にはP社が大手広告代理店に買収されるとの噂がまことしやかに囁かれたりもした。東芝のアミューズピクチャーズ、レントラックのコムストック買収をはじめ、中堅の配給会社が大きな資本の下に参画することで、新たなマーケット戦略を展開してきている。これから弱小配給会社は生き残りを賭けた戦いにいやが上にも望まなければならなくなってきているのだ。フランス映画社をはじめ、プレノン・アッシュ、巴里映画、セテラなど一時代を築いた個性的な配給会社が息を潜める一方で、SPOなどのビデオ系の配給会社が精力的な買付を展開し、ダニー・ボイルの新作をディールして大きな話題を集めていた。同じくビデオ系のアーチストフィルムやクロックワークスは主導的に国際的なチームを組んでの製作出資に精力的で、デイリーの業界紙に何度か取り上げられたりもしていた。とにかく日本の興行界も変革の時期にきている。こうした周辺の動きは、弊社にとっても刺激的だ。おちおちしている場合ではない。何かを始めなければ。ただ気ばかりが急くカンヌ映画祭でもあった。 | |
![]() マーケット会場は日増しに静かに |
![]() メイン会場はまだまだ盛況。 今日もスターひと目見たさに人だかりが |
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20 Mai 2003 ■映画祭情報(Report-Yuko TANAKA) |
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映画祭前半、全ての部門において観念的かクラシックな作品が多く、観客を一種のフラストレーションに陥れていたカンヌで、一番最初に衝撃を与えたのはガス・ヴァン・サント監督の“ELEPHANT”。アメリカのコロンバイン高校で起きた銃撃事件をテーマにした作品だが、言葉による説明は一切なし。事件が起る数時間前からを、思春期の危うさうぃ繊細な映像と既に悲愴感を予兆させるベートーベンの音楽を用いて表現した作品。ラストの悲劇とのギャップの強さに上映後の会場はショック状態に。フランスの日刊紙ル・モンドは「パルム・ド−ル候補」と絶賛した。しかしここに現れたのはフランソワ・オゾン監督。賛否両論まっぷたつに別れた“SWIMMING POOL” で一挙に賑わかせ、やっとカンヌに南仏らしい明るさが戻ってきた?しかしこの作品はカンヌから車で15分ほどの場所にあるヴァロリスでその夜に行われたパーティも話題に。セレブから政界のトップまで、なんと1500人が参加!会場まで辿り着くのも渋滞、そしてダンス・フロアに行く階段でも行列をしなければいけない程の大混雑。また作中に登場するようなプ−ルではシンクロナイズ・スイミングが披露。朝方まで続いたパーティ、プールの水は温かかったんだろうか…。そして今年一番の注目作の一つ、ラ−ス・フォン・トリアー監督の“DOGVILLE”がとうとう登場。3時間に渡る長い作品だが、フランスはもちろん世界中のジャーナリストが「傑作」と絶賛。一気にパルム・ド−ルの予想チャート一位に躍り出た。さて、これを抜く作品は今後出てくる? |
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■マーケット情報 マーケット最後の日、今日が決戦日 |
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ニューヨークレップの成田、パリレップの田中を残して、社長の沖田、専務の山岸、国際部の藤生は明日にはカンヌを離れてしまう。今日が我々の実質的な決戦日。二つの作品の結果が出るのだ。一作品は早朝に結論が出た。某有名監督の自伝的な作品で、ゲイ色の強い内容。この作品は某社(なんかはっきり書けなくてごめん。いろいろと支障があるもんで)からの依頼を受けてオファーを入れたのだが、アスキング100万ドルに対してそれを下回るオファーははじめから負け戦さだったかもしれない。大手4社が最後の決戦のテーブルについたとのこと。この顔ぶれを聞くと、弱小配給会社のシネマパリジャンははなからお呼びでなかった? ククッ、悔しい。でも反面、弊社にとっては大きな買物になることは必至だったので、肩の荷が降りたというのも正直な感想。 |
![]() ノガヒルトンホテルのテラスで開かれた フォルテッシモのパーティー 絶景の眺め |
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もう一作は、ショーン・ペン主演の作品。内容はニクソンの時代のアメリカを背景に「タクシードライバー」のような内省的な主人公を扱った、ショーンらしい政治的なメッセージを孕んだ作品だ。この6月から撮影に入るという。他にはショーンと親密な関係が噂されているナオミ・ワッツが出演している。アスキングは90万ドル。段階を踏んで結局それに近い金額で合意に達した。この作品のセラーが元フランス系のセールスカンパニーに居た人物だったのが効を奏した。彼は弊社のことをよくリサーチしていて、好意を抱いてくれていたのだ。担当者との関係性が事態を好転させることも有れば、前述の作品の様に、シビアに会社の規模を値踏みされることもある。まさに一喜一憂の毎日なのだ。 最後になって、とりあえずの成果があがり、手荷物なしでご帰宅ということは無くなった。ハードな8日間だったが、明日からはパリでゆっくり休養するつもり。残留組の2人、後はよろしく。 |
![]() 「ドッグヴィル」の二コール・キッドマンが 記者会見に |
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19 Mai 2003 350,000ドルの悪夢 |
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「ブルーベリー」関係の対応に追われた映画祭前哨戦は一段落がつき、これからは我々本来の目的である買付に専念しなければならない。実は、昨日までに水面下で動いていた2作品について結果が出ていた。 ひとつは、弊社が来年度の公開を予定している「パーティーモンスター」の監督の新作ドキュメンタリー“Inside Deep Slote”。タイトルからも判るとおり、伝説的なハードコア映画「ディープスロート」を題材にしたもの。この監督(2人組)、もともとドキュメンタリー出身で、過去にもアメリカのアンダーカルチャーのアイコン的な人物や、101人のレンタルボーイに材をとった作品で独自のスタイルを築いている。だから、この「インサイド・ディープスロート」も詰まらない訳がない。数日前にセラーから電話が入り、「350,000ドルでオファーが入った。同額のオファーを入れればそちらと契約したい。今日中にも回答をくれ」とのこと。しかし、である。この監督の過去のドキュメント作品は、夜レイトショーで楽しむような作品、衛星放送で深夜にひっそり放映されていたものをみつけて悦びを感じるような、そういう類の作品である。新作が特別これまでのものと変わらないのであれば、いかにも35万ドルは高い。回収は困難だろうという結論に至った。 |
![]() 今年のカンヌは毎日快晴 |
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もう一本は、“LOVE ME”というフランス映画。ギョーム・カネとマリオン・コチラ−ル主演のラブ・ファンタジー。いじめられていたポーランド移民の少女と親しくなった男の子が、オルゴールの箱を介して二人だけのルールで悪戯を繰り返すという遊びを思い立つ。最初は可愛い悪戯だったものが、2人の成長とともにエスカレートしていく。例えば洋服の上から下着を身につけて来い、怖い先輩の頬をビンタして来いといった類いの悪戯。やがて2人は離れ離れになり、互いに家庭を持つ。しかしカフェで偶然に再会。それまでの空白の時間を埋めるように、2人は密会し悪戯を再開する。当然、一線を超えてしまう2人は行き場を失い、ビルの工事現場からダイブ、キスを交わしながら生コンクリートの中に埋没していく。そして....といったようなストーリーライン。美術が「アメリ」風で、ただジュネほどカット割がキメキメじゃなくていい感じ。心配なのはこの映画の結末。演出次第では陳腐なものになってしまう。アスキングは35万ユーロ。そこが心配で20万ユーロのオファーを入れた。セラーは何かあったらすぐ電話を入れるとのこと。そしたらものの10分も経たないうちに電話が入り、アスキング以上のオファーが出たからブースまで戻ってきてくれという。早速国際部のスタッフをブースに直行させると、そこにはN社の社長が。ブースを陣取って明渡さないのだ。しばらく脇で待たせていると、セラーがディールをクローズさせたとのサイン。はぁ? 粘り勝ちってわけ。ちょっと残念だけど、諦めるしかない。こんなことは日常茶飯事。人気のある作品には当然、各社のバイヤーが殺到する。恋愛と一緒で、想いは叶わないこともあるってこと。人生には割り切りが肝心。ほな次の恋愛相手を探しましょうか.....。 |
![]() でも心は空ろ....!? |
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18 Mai 2003 「ブルーベリー」衝撃の映像が、世界初公開 |
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今日は弊社にとって、今映画祭中最もエキサイティングな日となった。メディアファクトリーとの共同提供作品となる、ヤン・クーネンの最新作「ブルーベリー」の映像が、世界で初めて披露されるからである。マーケットのメイン会場となるリビエラの50席足らずの試写室には、上映30分前までには300人以上が列を成し、異様な熱気の中8分間の映像が公開された。問題の映像は、スピーディーな空撮からスタートする。一面の荒野が映し出されると、遥か彼方に白い軌跡が僅かな点のように見える。カメラは猛スピードで、その点を追いかける。空から地上へと舞い降りたカメラは、やがてその白い軌跡が、馬たちが疾走し舞い上げる砂埃であることを確認する。馬たちをさらに追い越し、険しい地形をぬって、切り立った崖っぷちへとたどり着くと、そこにはヴァンサン・カッセル演じるブルーベリーが佇んでいる.........超クールな映像だ! インディアンのシャーマニズムのエッセンスを取り入れたスピリチュアルな冒険活劇である「ブルーベリー」。映像の後半には、善と悪の超自然的精神が融合し完璧な英雄へと変貌を遂げるブルーベリーが、高度なCGを駆使して表現され、めくるめくような映像体験が実感できた。試写室を後にした全世界のバイヤーたちは、予想を上回る迫力に、感嘆の声も出ないといった感じである。 | ||
![]() ヴァンサン・カッセル |
![]() ヴァンサンとヤン |
![]() ヴァンサン、ヤン、マイケル |
熱気冷めやらない宵、旧市街の小高い山の頂にあるヴィラで、「ブルーベリー」のパーティーが催された。ヤン・クーネン、ヴァンサン・カッセル、マイケル・マドセンも出席。ヤンもヴァンサンも、インテリジェンスで紳士的。「ドーベルマン」から受ける印象は、カイエ・ド・シネマを尻で拭くような挑発的なイメージだったので、若い監督や俳優にありがちな高慢ちきなイメージを抱いていたのだが、全くその逆でした。で、何よりも渋くてカッコ良かったのがマイケル・マドセン。低音でセクシーな彼の声に魅了された女性も少なくなかった。 夜を徹して明け方まで続いたパーティー。このカンヌではこうした宴が毎夜毎夜、いくつも開かれている。中には連日連夜参加しているつわものもいて、結局のところセラーもバイヤーも体力勝負なのだ。 |
![]() シネマライズの頼夫妻と会談するヴァンサン |
![]() Dancing All Night? |
![]() 盆踊り? |
![]() インタヴューを受けるヴァンサン |
![]() 渋い魅力のマイケル・マドセン |
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17 Mai 2003 家庭的な雰囲気のパーティー |
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4日目。「ディナーラッシュ」のセールスカンパニーが万を持してお薦めという、本国で賞を総なめにしたという中国映画“FOR THE CHILDREN”を、ブースのビデオプロジェクションで観る。何でもカンヌ直前に扱うことが決まったので、試写室を抑えられず、それでビデオでの試写を見てくれとのリクエスト。年間を通して全く雨が降らない荒地にぽつりと立つ、女の先生と彼女の息子を含む十数人の子供たちを抱えた学校が舞台。そこに北京から都会的な装いの若い女の英語の先生が赴任してくる。映画は子供たちの描写をよりも、2人の違う世代の女性の生き方や価値観にスポットが当てられ、ちょっと生真面目な感動作品といった感じ。悲劇的な結末を迎えるのだが、僕はこの新旧の女性に共感することが出来なかった。 |
![]() “LIVE FOR EVER”パーティー会場での ジョン・ダウワー監督 |
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午後6時、先述の弊社配給作品“LIVE FOR EVER”のミニ・パーティに参加。監督ジョン・ダウワー、プロデューサーが来ており、Oasis, Blur, Pulpらのメンバーからインタビューを取るにあたっての苦労話を聞かせてくれた。どうでもいいがこのパーティ、ゲイな方がとても多いのが気になりましたが、何故? コンペ作「Il Cuore Altrove」の夜の正式上映“ソワレ”に、「ブルーベリー」のヤン・クーネン監督、ヴァンサン・カッセル、ジュリエット・ルイス、マイケル・マドセンが出席するということで、赤じゅうたんは大騒ぎ。あまりの人だかりに僕が駆けつけたときには既に時遅し、彼らがメインストリームを上りきった後でした。しかしこのプーピ・アヴァティ監督のイタリア映画の評判は中々よく、フランス映画界からもジャン・ロシュフォール、サンドリーヌ・ボネール、ジェラール・ドパルデュー、レジス・ヴァルニエなどが上映に訪れていた。しかし日本はまだ配給が決まっていない様子。 |
![]() 同会場にはベン・リーの姿も |
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16 Mai 2003 ■映画祭情報(Report-Yuko TANAKA) |
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リュック・ベッソン製作の『ファンファン・ラ・チューリップ』出演のぺネロぺ・クルスがトム・クルーズのエスコートなしで登場、会場前に集まったファンをがっかりさせてから、早や二日。各部門ともフランス映画が登場し始めた。まず「ある視点」部門の開幕を飾ったのはアルノー・デプレシャン監督の『「男たちと一緒に」を演じながら」』“ EN JOUANT DANS LA CAMPANIE DES HOMMES”。シェークスピア的陰謀と復讐の世界を現代の企業社会に置き換えた作品を、台詞合わせからミーティングまでその生成過程から見せる二重構造の作り。そこに監督の個人的趣味丸出し?と言えるポ−ル・ウェラーの音楽が重なり、独特の雰囲気を醸し出している。勢いのあるタイトル・ロール、俳優達の演技は素晴らしいのだが、話が進むに連れて作品が重たくよどんできてしまう感が。文系青年には興味深い作品かも?また監督週間ではジーグフリードの第2作目『サンサ』“SANSA”がお目見え。前作を更に進化したような作品は放浪の生活を送る青年サンサの世界一周の旅を、様々な出会い、初老の指揮者兼バイオリニストのツアーの旅をからめて描いている。しかし起承転結の物語性は一切なし、ほとんどが即興の演技、台詞よりも音楽がで占められた作品は、いままで見たどの映画にも似ていない。詩的エッセイを見ているような不思議な作品。そしてコンペティションにはアンドレ・テシネ監督の『迷子』“LES EGARES”が登場。第2次世界大戦中、疎開をする母親(エマニュエル・ベアール)と子供達、そこに偶然合流することになる思春期の少年を描いている。クラシックな作品なので、逆に刺激を求める辛口なカンヌの観客からは、ちょっと拍子抜けという厳しい声も上がってしまった。これから登場するフランス映画も覚悟しておいた方がよいかも。 |
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■マーケット情報 いよいよビジネス・モード突入? |
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昨日の「Live Forever」に続き、今日もシネパリジャン買付作が二本マーケット・プレミア上映された。一本目はスペインのサイコ・スリラー、「ユートピア」。本国スペインで既に大ヒットした鳴り物入りだけに、会場は満席で、何と立見状態。日本のみならず、世界中のバイヤーに注目されている様だ。「ドーベルマン」のチェッキー・カリョがいい味を出していた。スタイリッシュな映像と音楽、先の読めないストーリー展開にグイグイ引き込まれる。最後まで見たかったのだが、もう一本の上映がすぐ始まってしまうのでエンドロールが終わらないまま、ダッシュで500mも離れてる次の上映会場へ。今度は「クリクリのいた夏」のジャン・ベッケル監督の新作「ストレインジ・ガーデン」。一風変わって、大戦後にピエロになった男と周りの人々を描いた感動作で、こちらも本国フランスで大ヒットしている。あまりの感動に仕事を忘れ思わず涙が。会場から出ると、日本の広告代理店の女性が号泣してました。二本とも完成する前の脚本の段階でディールしていただけに、完成度の高さに大満足。二本ともビデオ会社が共同出資することが決定している(「ユートピア」がアーティストフィルム、「ストレインジ〜」がハピネット・ピクチャーズとバップ)。あとは劇場をブッキングしなければ。 |
![]() 今年はなんていい天気。 |
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3日目ともなると、話題作の買付情報が飛び交う頃。「8人の女たち」のフランソワ・オゾン監督の次々回作「5×2」が製作前にして、前作も買っている六本木の会社に買付けされた。ところがオゾンに関してはバラエティー誌に気になる記事が。この記事によるとオゾンの全作を先述の某社が買い付けていると記載していたけど、ちがうよね。渋谷某配給会社が読むと泣くぜ!! どうもこの業界は言ったもの勝ち、みたいのところがあってと、節操がない。 セールス会社を回っているとまず必ず聞かれるのが「ブルーベリー」のこと。「どんな作品になるの?」「いくらしたの?」と皆興味津々。弊社が買い付けていること自体、皆さまビックリしてますが。ある意味でこのマーケットの目玉作品だけに、その動向は世界各社が注目している。特にアメリカは大手配給会社が買い付けることが確実視されており、M社になるのではないかと噂されているようだ。いずれにしろ、18日のプロモ上映が肝であることは間違いない。 今日はリュック・ベッソンのヨーロッパ・コープと、オゾンの「5×2」などを売っているセルロイド・ドリームズのパーティが重なり、日本の映画人たちはほとんどがどちらかに参加していた模様。しかし僕たちはお構いなく、その頃は旧市街で50年もののワインをご馳走になって酔っ払ってました。芸術家のみなさん、ご馳走様でした。とても著名人のものまねが上手な方々で、たのしませていただきました。 |
![]() UTOPIAのビルボード |
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15 Mai 2003 今日からマーケットも活発化!? |
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ストで足止めをくっていたバイヤーたちも、遅くても昨日の午後にはカンヌ入りし、マーケット会場では僕たちのコンペティターとすれ違うことも増えてきた。弊社は今マーケットは5人のスタッフが参加している。社長、専務、国際部、ニューヨークレップ、パリレップ。こういう体制で臨むのは今年が始めて。フランス映画を主に買付してきていた弊社も、昨年から「チェルシーホテル」や「ディナーラッシュ」などアメリカ映画にも触手を(CPNY)なるレーベルも立ち上げたほどなのだ。「ディナーラッシュ」の成功はアメリカのセラーの間でも評判になったらしく、それまでお付き合いの無かった比較的バジェットの高いスターシステムのハリウッド映画を扱うセールスカンパニーからの売り込みも多くなってきている。でもね、日本の大手配給会社が買い漁るそういう類の作品には、興味がないの。ビジネスとして、シネマパリジャンとしてやるべき作品を見極める。商業ベースに乗るか否か、シネマパリジャンとしてやる意義があるか否か。そのバランスをいつも考えながら、作品をセレクションしているのだ。マーケティングと個性の絶妙なさじかげんが、バイヤーのセンスを問われるところかも。 |
![]() 賑やかになってきたカンヌ市内 でもみんな観光客!? |
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さて、今日は午後から弊社の配給作品のマーケット上映があった。「Live Forever」という、oasisとBRURの確執を中心に、同時代に活躍した音楽、映像、アート、ファッションの担い手たちが浮き堀にする90年代のイギリス。そのドキュメンタリー映画だ。この作品は弊社の専務が、今年2月にロスのアメリカン・フィールム・マーケットで惚れこんでディールしたもの。今回はシアターブッキング、つまり興行関係者に観てもらって公開劇場を決めるのが、専務の最重要ミッションなのである。試写の結果は?? もちろん今は言えませんよ。 その後僕は「Carmen」というスペイン映画の試写へ。アルモドバルの「トークトゥハー」のバレリーナ役だという女優がカルメンを演じているスペイン映画。ビゼーの歌劇で有名なカルメンを正攻法で撮ったドラマ。カルメンのもろ女っ!の魅力に翻弄されていくフォセの苦悩を描いているのだけれど、例のたったらたんたん、たらたらた〜んがないと、ドラマだけじゃ辛いでしょ。結構えぐい描写もありぃので、女性の反感は買いそうな映画でした。ということで、ウチはバスしました。 |
![]() カールトンホテルの前に出現したT32体 |
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14 Mai 2003 映画祭初日、ストの影響で閑散としたカンヌ |
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昨日のストの影響は、映画祭全体の活気に大きな影をおとしている。日本のバイヤーの60%が今日の午前の段階でカンヌ入りしていないという状況。多分日本以外の国も同じ状況だから、当然マーケット会場は例年になく異様な静けさ。もうひとつ、SARSの発症地域からの参加者は、10日以上の試験期間を経て発症が認められないとの承認がなければ、映画祭に参加できないという厳しいお達しが発表された。もちろん、香港や中国からの参加者はセラーもバイヤーも10日前からヨーロッパ入りするなどして、その条件をクリアーしなければならず、このことを理由に参加を見合わせた会社もあったようだ。
で、僕たちはといえば、18日に世界初公開されるヤン・クーネンの最新作「ブルーベリー」の8分間の映像公開イベントの準備と打ち合わせに明け暮れた。このイベントには監督をはじめ、主演のヴァンサン・カッセル、ジュリエット・ルイスらが出席する大掛かりなもの。全世界から300人もの映画関係者が招待されている。シネマパリジャン的にも未曾有の大作なのだ。この映画については、18日のレポートをお楽しみに。 |
![]() 今年のメイン会場 |
![]() ロマン・デュリス、 クリスティン・スコット・トマ が共演で話題の「ルパン」の看板 |
![]() STUDIO CANAL PLUSのブース |
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13 Mai 2003 明日からいよいよ映画祭がスタート しかし交通機関のストライキで、世界のバイヤーたちがシャルル・ド・ゴールに足止め |
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映画祭の開幕を控えた今日、フランスは交通ストに突入。朝の8時から14日の午前8時までパリ市内のあらゆる交通機関が間引き運行されるというのだ。飛行機もご多聞に漏れず、その80%が運休するとの発表。我々配給会社のバイヤーやジャーナリストたちも、本来なら今日、日本からカンヌ入りするというのが常套手段だったのだが、事前の情報がヒステリックに行き届いていた(!?)為か、大事をとって昨日のうちに入ったという慎重組が大半を占めた。それでもシャルル・ド・ゴールで足止めを喰らい、空港で一泊を余儀なくされているのは、時間的余裕のあるジャーナリストではなく、配給会社の人々。結局日本からの乗り継ぎ便は欠航という最悪の結果に。我々シネマパリジャンはパリでミーティングが入っていたため、一昨日にパリ入りし、今日は午前10時の便でオルリーからニース空港へと向かったが、おどろくほどストの影響は受けずに済んだ。それどころか空港は閑散としていて、普段よりチェックインもスムーズ。フライトも快適そのものだった。 |
![]() 閑散としたオルリー空港 |
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午後からは、映画祭に併営されている見本市、マルシェのレジストレーションに向かう。昨年から映画祭のメイン会場となるパレの脇の船着場内のイベント会場が、登録の受付カウンターになっている。去年より混雑している感じ。これは申請を希望している人数が増えたからではなく、映画祭側の対応がただ悪いだけという噂も。
没後10周年のフェリーニ監督にオマージュが捧げられた今年のカンヌ。映画祭の公式ポスターもイタリア語でVIVA IL CINEMA!のロゴがフィーチャーされたシンプルなものに。とても映画祭のポスターとは思えない、おしゃれといえば聞こえがいいけれど、ちょっと味気ないデザインではある。さて明日から「WASABI」のジェラール・クラヴィツク監督の「ファンファン・ラ・チューリップ」で幕を開ける映画祭。公式上映作品とマルシェで上映される作品、これから完成するポストプロダクション作品など、他のカンヌ情報では得ることの出来ない裏の裏、のとっておき情報を毎日お届けします。 |
![]() マルシェのレジスレーション会場は超混雑 |
![]() 今年のフランス映画界最大の話題作、 ヤン・クーネン監督「ブルーベリー」の 超大型ビルボード |
「クリクリのいた夏」のベッケル監督最新作 「ストレンジ・ガーデン」のビルボードも。 |
カンヌの海岸通り |