短期集中連載!!(5/15-23多分毎日更新)
シネマパリジャン・スタッフが映画祭会場から毎日レポート敢行
カンヌの裏側日記


26 MAI 2002
カンヌ映画祭裏日記最終版
 パルムドールはロマン・ポランスキーの「戦場のピアニスト」でしたね。この映画の上映は閉幕日前日くらいだったので、当然僕たちはそのリアクションは知りません。23日の朝までの報道では、俄然アキ・カウリスマキがパルム・ドールではないかと持て囃されていましたが、こちらはグランプリに留まりました。映画祭期間中はカンヌ中のホテルのロビーにデイリーでヴァラエティやル・フィルム・フランセ、ムービング・ピクチャー、スクリーン・インターナショナルなどの業界紙が届けられます。朝6時から7時には起床し、ルーム・サービスの朝食をとりながら、スタッフ全員でこれらの業界紙に目を通しその日の作戦を練るわけです(弊社の場合)。これら業界紙には、前日までのコンペ作品の星取りが掲載されます。作品を査定するのはカイエ・ド・シネマやプレミアの編集者から、各国の一般紙の派遣記者、映画ジャーナリストなど。そこでの星の数が圧倒的だったのが、アキ・カウリスマキの「過去のない男」だったわけです。だからここでの評価が必ずしもその年の審査員たちと嗜好が合致するわけではないのです。それで数年前の「ロゼッタ」や「ユマニテ」のように、誰も予想できなかった作品がパルムドールを取っちゃったりするわけ。でもみんなこの評価、結構気にかけているんだよね。

 ところで22日のレポートを最後に、シネマパリジャンスタッフは、翌日カンヌを発ち、24日に帰国しました。この9日間のレポートを、皆さんはどのような感想を持ってご覧いただいたのでしょうか。掲示板への書き込みも無いようなので、あまり大した興味も持たれずに終わってしまったかなぁ、あちゃ〜ってな感じかなぁと反省しきりです。
 毎日執筆者を代えて書き綴った本日記、二、三の誤記がありました。

 最初に映画祭のメイン会場となるグラン・パレの壁面を飾ったのは、シャガール風の絵ではなく、黒澤明監督が「夢」の為に描いた絵コンテから取られたものでした。14日、たまたまユニフランスの会場でばったり出会った野上照代さん(黒澤監督のタイムキ−パーとしてその片腕を担った)からでした。野上さんの説明によれば、これは実際には映画で採用されなかったものだそうです。またある視点の会場では、黒澤監督のドローイング展も催されていました。


 監督週間の開幕上映の式典で表彰された人物にも誤りがありました。実際に表彰されたのは、「アデュー・フィリピ−ヌ」のジャック・ロジェ監督に対して。ロジェ監督は寡作家と知られており、その寡作家振りに対して、スワロフスキー社製の“黄金の馬車”が授与されたわけです。“黄金の馬車”賞だなんて、粋ですよね。スワロフスキーの現在のイメージキャラクターである、レティシア・カスタがプレゼンたーとして登場したのも当然の成り行き。あっ、そういえば文中レティシアがすべてレテシアになっていました。こちらも誤りでした。
 それからアンヌ・フォンテーヌはある視点の審査員ではなく、監督週間の審査員でした。フォンテーヌ監督とは本当に頻繁に出会いました。最初は「セックス・イズ・コメディ」のテーブル・インタヴューのときでした。おかしいのは2度目。グラン・パレの入口で、セキュリティー・チェックをしている係員と押し問答しているところでした。彼女の傍らには、アジア系の少年が所在なげに立ち竦んでいます。彼はプロデューサー、フィリップ・カルカッソンヌとの間の長男。アンヌはリベラルな思想の持ち主です。フィリップとアンヌはベトナムから、生まれたばかりの彼を養子縁組したのです。その彼のIDカードがないからと、係員は頑として2人を中へ入れようとはしません。アンヌも引こうとはしない。僕たちも暫く様子を見ていたのですが、決着は付きそうにも無く、その場を離れました。彼女の「どうやって父親を殺したか」という最新作は、近年稀に見る傑作です。機会があったらぜひご覧下さい。

フィリップ・カルカッソンヌ
 シネマライズの頼社長と専務(ふたりはご夫妻です)の会食の際に出てきたダンサーの名前にも誤りがありました。ルドルフ・ヌレエフが正しい表記です。このとき何故か舞踏の話になり、おふたりは晩年のヌレエフとマーゴ・フォンテーンの「白鳥の湖」をご覧になったとのこと。もっと興味深かったのが、ベジャール=ジョルジュ・ドンの初期の「ボレロ」には、彼の周りを取り巻く群舞が無かったのだそうです。その後群舞付きの「ボレロ」を観たとき、社長のお母様が「なぁに、あのごきぶりみたいの」と仰ったというエピソードを伺って、みんなで大笑いしました。シネマライズでは、今年のクリスマスにパトリス・ルコント監督の「歓楽通り」を上映していただきます。映画祭期間中に、プロデューサーのフィリップ・カルカッソンヌ氏、レティシア・カスタのお父さん、ドミニク・カスタ氏両氏と日本のマーケティングについて打ち合わせをしました。フィリップの話では、パトリス・ルコントは今この映画の「インターナショナル・ヴァージョン」を編集中だそうです。日本でもフランス版と国際版の2ヴァージョンを上映できるといいですね。ドミニク・カスタ氏とも、レティシア来日の時期について打ち合わせ。今年の9月に来日することが決定しました。彼女は映画の中で素敵なラブ・ソングを歌っています。ご期待あれ。
 さて、シネマパリジャンはこの映画祭で何をしたかというと、15日付のレポートで記載しましたが、「パーティー・モンスター」という作品の契約を交わしました。80年代のニューヨークでクラブ王として君臨した実在の人物のリッチで過激なライフスタイルに迫った作品で、その“天使の顔をした悪魔”クラブ王役をマコ−レ・カルキンが演じます。「ヘドウィク・アンド・アグリー・インチ」のプロデューサーが取り組む意欲作です。映画は現在撮影中。来年のサンダンス・フィルム・フェスティバルでお披露目の予定です。

 それでは、次回はヴェネツィア国際映画祭からのレポートになるかな。約束ナシの再会を約束して......





22 MAI 2002
名残り惜しい最終日
 映画祭も残すところあと4日。先日も記載したように、各配給会社にとっての映画祭は終わりに近づいている。シネマパリジャンにとっては今日が最終日。時が経つのは早いものである。

 Bunkamuraル・シネマの中村由紀子さんに、グレイ・ダルビオン・ホテルの脇にあるフォションで、美味しいクレープでお昼をご馳走になった。来年公開に向けての新しい作品探しについてああでもない、こうでもない、と議論を交わす。配給会社が映画をいいと思っても、劇場側が興行的にきつい、と思えばダメだし、逆に劇場側が気に入っても、配給会社にとってはMGが高すぎれば買えないし、となかなか両者が納得いく映画を見つけるのは至難の業である。云ってみればお見合いみたいなもの。お互いの気持ちが一致したときに初めて公開が実現する。劇場も配給も、一本の作品に多大な情熱とリスクをかけるのだから、作品選びは真剣。

ル・シネマ中村由紀子氏
 新人Delphine Gleize監督「Carnage」は、死亡した闘牛の、三つの部位がそれぞれベルギー、スペイン、フランスに渡り、三国でのそれぞれの物語が微妙に重なり合う挑戦作。演出がかなり凝っており、カメラ・ドール(新人監督)賞受賞が有力視されている。この作品も日本の配給先が決まった。また、今映画祭中最もヒートした「Bend it Like Beckham(ベッカムのように曲げろ)」。ベッカムに憧れているインド系の女の子が所属するサッカー・チームの活躍をさわやかに描いたこの作品には、大手配給会社が殺到した。小品の佳作といった感じのこの作品に、セールス会社が提示した希望最低印税補償額は1億数千万円。しかしこの作品も今日ディールが成立した模様。ところがその配給先が錯綜して業界人の間で伝わっており、なかなかスリリングな展開の様相を呈してきている。買付値段も、前述の金額にほぼ近いものと噂されている。映画祭期間中、この手の噂がマーケット中を駆け巡る。その噂に翻弄されて、買付を逸してしまうことすらあるくらいだ。ある配給会社の名物社長などはそれを持ちネタにしていて、ギスギスしがちのマーケットを和ませる。「どこが某作品を買ったらしい」情報を仕入れたいがために、各セラーのブースを用もなく尋ね歩く性質の悪いスピーカーもいるらしい。
 最終日、漸く時間が空いてウディ・アレンの「ハリウッド・エンディング」を観る。急に盲目になってしまった映画監督が巻き起こすドタバタ・コメディ。腹を抱えて爆笑の連続。なかなか堪能しました。夜はビデオの販売会社でもあり大手卸売会社でもあるビーム・エンターテイメントの方と中華料理を食べる。最後ということでつい飲みまくってしまう。永島さんは今日、外人に日本の俳優と間違えられたそうである。そいえば、鈴木さんも監督っぽい。すると永田さんは若きプロデューサーと言うところか。ビームとは「レセ・パセ」でご一緒することが決まっている。

ビームの左から永田さん、鈴木さん、永島さん。
 食事の後は街を探索。いざ明日帰るとなるといささか名残り惜しい。振り返ってみると、今回は懐かしい人との再会も多かった。ある視点の審査員をしているアンヌ・フォンテーヌ、日本語が見違えるほど上達したジャン-クレティアン・シベルタン=ブラン、ちょっとスレンダーになったカトリーヌ・ジャコブ。立ち話程度の会話しかできなかったけれど、なかなか楽しい映画祭だった。
 夜のカンヌは会場も街中もライトアップされており、雰囲気がある。そういえば、今年のカンヌに「タバコをくれ」と言って、探しているすきに財布などを盗むスリが発生しているそうだ。日本人も何人か被害に遭っているらしい。犯人は身長165cmの痩せた若い男性とのこと。近々カンヌに行く人は気を付けて。30分程気持ちいい夜風の中を散歩した後、わがホテルに帰る。これから荷物を詰めなければいけないと思うと気が重い。
 FIN-2003年カンヌに続く?

ライトアップされたメイン会場






われわれのホテル



21 MAI 2002
注目作が続々配給決定!
 映画祭開始から今日でちょうど一週間になるが、各社とも買付け交渉は大詰めを迎えている。今年は、質の高いドキュメンタリー映画が目立つ。まずコンペ部門の話題作「Bowling for Columbine」を、アトム・エゴヤン監督「Ararat」を含め4本のパッケージでアライアンス・アトtランティス社から某社が買い付けたという情報が。またテリー・ギリアムが「ラ・マンチャの男」の撮影が頓挫した経緯を追った映画(タイトル不明)を他の会社が購入した。他にもドキュメンタリーではないが、「セントラル・ステーション」の監督ウォルター・セールスがチェ・ゲバラの若かりし頃の友情と青春を描く「Motorcycle Diaries」が脚本の段階で日本の配給が決定した。コンペ部門のケン・ローチ監督「Sweet Sixteen」およびマイケル・ウィンターボトム監督「24 Hour Party People」、ベッカムに憧れるサッカー少女の感動作「Bend it Like Beckham」の三作は同じイギリスのセールス会社ザ・ワークスが扱っているが、それぞれ一両日中に日本の配給が決まりそうである。また、TF1のトッド・ヘインズ監督「Far from Heaven」も配給が決定したという発表が。

 そんなマーケットの情報交換を含め、午前中にはシネスイッチ銀座のブッキング担当者と、夏に公開される「ディナー・ラッシュ」および新作映画の打ち合わせ。今夜のソワレ用のドレスをどこで買おうかお悩みのご様子。その素敵なドレスは後述のパーティでみんなにお披露目。昼はメイン会場パレの裏にあるリヴィエラという大きな会場でセールス会社のブースを何社か回り、新たな情報収集。夜はシネマライズの頼社長、専務ご夫妻に、ホテルに近いクスクスのレストランでたらふくご馳走になる。ジョルジュ・ドン、ルドルフ・ヌレフ、マーゴ・フォンテーンなどの過去の天才ダンサーたちや、ジンガロの話に花が咲く。お二人は今年からシネマパリジャンの社員と同じホテルに宿泊しているのだ。


シネスイッチ銀座ブッキング担当吉澤氏

各社のブースが集う「リヴィエラ」の俯瞰
 日付が変更した頃に、「パーティ・モンスター」のセールス会社、フォルティッシモ主催のパーティーに顔を出す。毎日どこかで映画や会社のパーティをやっているが、今年はこれが初参加。監督週間の「Mon-rak Transistor」のお披露目に、監督や日本の配給会社(フォルティッシモから「レイン」のパン兄弟監督「The Eye」、「アタック・ナンバー・ハーフ」の続編も買っている)の人を含め、多くの関係者で賑わっていた。

薄明かりの中大盛り上がり

バンドがパーティに花を添える








20 MAI 2002
映画祭の仕切りに異議あり
 映画祭も中盤を過ぎると様々な評判が出回り、人気の高い映画には当然各国のバイヤーが集中するが、バイヤー用の上映回数は限られており、1時間待っても上映開場に入れないことがままある。しかも、個人の登録バッジが仕分けされていて、BUYERという買付け担当者を証明するバッジを持っている人が優先的に先に入れられ、バッジにBUYERと書いてないだけで、いくら先に並んでいても後回しにされて結局入れないことが ある。しかもその個人がBUYERであるかないかは映画祭側が勝手に決め付けていて、どっちにしろ払う登録料は一緒なのである。特に買付けに興味のある映画は買付け担当者だけでなく、劇場やビデオ、宣伝担当者にも観て貰いたいのに、これでは本末転倒である。先日お伝えしたコンペの「Bowling for Columbine」がそのいい例で、何日も並んだが一向に見れない、とブーイングの声が。来年からはどうにか改善して欲しいものである。
 愚痴から始まってしまったが、批評家週間に出品されているスペインのスリラー映画「INTACTO」を銀座の老舗配給会社が買った、などの買い付け情報のほかに、今回のカンヌでは映画会社の多国間パートナーシップのニュースも飛び交っていた。まずはアメリカのミラマックスがフランスのTF1と合弁で配給会社をフランス国内に設立するというニュース。今までミラマックスの映画はフランスではバック・フィルムズがほぼ独占的に配給しており、またTF1の映画は作品毎に別の配給会社に売られていた。今回の提携には、ミラマックスのウェインスタイン会長がずっとフランス映画を製作したがっていた、ということが背景にあるようだが、いずれにしろこの新しい会社の台頭がフランス映画界に新風を吹かせることは間違いなさそう。シネマパリジャンとしてもTF1からは「金色の嘘」他2003年度公開用の新作映画も取得しているので注目したいところである。「Full Frontal」「Chicago」などのミラマックスの新作から新しい会社で配給する様だ。他には、日本のクズイエンタープライズの葛井夫妻とオランダのフォルティッシモ(「パーティー・モンスター」を売っている会社)のトップ二人、計4人でボヘミアン・フィルムズという製作会社を設立。アジアの監督、俳優を国籍問わず使い中規模な良質映画を製作していくと発表。新企画の中には、タイ人監督Pen-ek Rantanaruang(今回の監督週間に出品されて、日本の配給も決まっている「Mon-rak Transistor」の監督)の新作があるが、主役のタイ在住の日本人には浅野忠信の名前が挙がっている。

統合事業の渦中の人、
TF1のセールス担当ペリーヌ・テゼ



19 MAI 2002
5日目を迎えて漸くマーケットに活気が?
 コンペ部門の作品が常連監督に占拠されて、今ひとつ盛り上がりに欠く映画祭。マーケットの方も静かな様相だったが、ここに来て俄かに各社の買付け作品などが明らかになってきた。コンペ作品“ALL OR NOTHING”はマイク・リーが家族再生の物語を真摯な視点で描いた感動作。伝説のプロデューサー、ロバート・エバンスの華麗な半生に迫った“THE KID SAYS IN THE PICTURE”、オリヴィエ・アサイヤスの抽象的な手法を用いた“DEMON LOVER”、ギャスパー・ノエの最高傑作との批評も目に付く“IRREVERSIBLE”、ダイ・シジエ自らのベストセラー小説を映画化した“THE LITTLE CHINESE SEAMSTRESS”、ジャー・ジャーン・ケの“UNKNOWN PLEASURES ”、アレキサンダー・ソクーロフの“RUSSIAN ARK”、オリヴェイラの“O PRICIPIO DA INCERTEZA”、クローネンバーグの“SPIDER”、ポランスキーの“THE PIANIST”、7人の監督によるオムニバス作品“TEN MINUTES ODER - THE TRUMPET”、カトリーヌ・ブレイヤーが新境地を示した“SEX IS COMEDY”などの作品に日本の配給が付いたとアナウンスされた。一方、本マーケットで加熱しているのが、マイケル・ウインターボトムの“24 HOUR PARTY PEOPLE”と、ミカエル・ムーアのドキュメンタリー“BOWLING FOR COLUMBINE”。前者は1970年代の伝説的なクラブ王トニー・ウィルソンの生涯を描いた作品で、すでに数社の争奪戦になっているという。後者は突撃レポート作品でカルト的な人気を誇るムーア監督が、一般市民の銃器所持に鋭く切り込んだ作品で、この作品の上映は連日満員。この作品もいづれ日本の配給先がきまるだろうと言われている。逆に人気が急落しているのがオープニング上映だったウディ・アレンの“HOLLYWOOD ENDING”。この作品にセラーが希望している最低印税保証金が2億円近いことから、各配給会社は敬遠している。過去の数作品を買付けてきた某社が、そのリスクヘッジから法外な金額でビデオライツをビデオメーカーにサブライセンスしてきた弊害が、ここにきて露呈した形だ。コンペ部門以外でヒートしているのが、フランソワ・オゾンの“SWIMING POOL”。オゾンは渋谷の老舗配給会社が地道に日本に輸入してきていたのだが、前作の“8 FEMMES”を、昨年の秋にやはり一億近い金額で先述のウディ・アレン株を暴落へ導いた某社が落とした。その所為でセラー側からは、僅か7億円の制作費のこの新作に1億3千万円の希望価格が提示されるまでになっている。その逆に、マコーレ・カルキンがこれまた伝説的なクラブ王を演じる“PARTY MONSTER”は、カンヌで争奪戦が繰り広げられるであろう注目の作品のひとつに挙げられていたが、精力的な交渉が認められて映画祭開幕当日にシネマパリジャンが契約まで漕ぎ付けた。


配給会社の戦いの場となるマーケット会場
 やっぱりカンヌはエキサイティングなマーケットだ。映画祭中半を迎えて、配給各社は追い込みに入っている。あと数日で彼らのビジネスはクローズされるだろう。ジャーナリストたちがパルムドールの行方に躍起になっているころ、僕たちのような映画ビジネスに身を置く者は、身支度を済ませて帰国の途に着く。23日、24日あたりが帰国のピークになるだろう。その後マーケット会場は日増しに閑散とし、セラーたちは閉幕の日を待たずブースの片付けはじめるのである。

朝9時。マーケット会場の開場を待つ人々。

ルコント監督の新作のポスターが飾られた
PATHE社のブース入口



18 MAI 2002
アンナ・トムソン主演「ブリジット」登場!
 昨日まで日差しの強いお天気つづきのカンヌ。しかし今日はめずらしく朝から雨模様。

 今日の試写では「ファストフード・ファストウーマン」のアモス・コレック監督、アンナ・トムソン主演の「ブリジット」がお目見えした。(この作品には弊社が製作に入っている。)前作とタイプの違うハードボイルドでかっこいい作品の仕上がりに皆大満足!プライベートでもおしゃれさんのアンナ・トムソン。前作はフェミニンな感じの衣装だったが、今回はシンプルでシックな衣装が多く、やっぱり雰囲気のある女優さんは何を着ても似合うものです。この映画にはアンナの双子の息子のうちのひとりが出演している。昨年母子で来日した時には、甘えん坊でスタッフを振り回していたガキンチョが、立派に成長していることに思わずほろり。早く皆さまにも観ていただきたい一作。

 さて、これまでユニークな海外セールス担当者の紹介をしてきたが、今回ご紹介するのは「レセ・パセ」セールス担当者のサヤさん。日本人とのハーフだが、なぜか英語と日本語が混ざっている。例:「いらしゃっていただいてベリー・ベリー・ハッピーね。」

スタジオカナルのサヤ・ハドルストンさん。
 今日も各自打ち合わせや試写に追われ、最後は打ち合わせを兼ねた食事会。映画祭と土曜の夜ということもあり、今夜は特に人出が多く道には人が溢れていた。旧市街にあるレストランからホテルに戻る間、弊社男性スタッフが地元の人にブルース・リーに間違えられるという珍事件で本日は終了。



17 MAI 2002
二キータは熱い女だった
 本日の仕事始めは、昨日お伝えした「セックス・イズ・コメディ」の監督、キャストのテーブル・インタビュー。ホテルの中庭に会場を設定して、(1)カトリーヌ・ブレイヤ監督+アンヌ・パリロー、(2)グレゴワール・コラン+ロクサンヌ・メスキダの順で日本のジャーナリスト数名との対談形式。現地の担当者から監督は話し出したら止まらないから気を付けろ、と忠告されていたが、実際止まらなかったのはアンヌ・パリローで、この映画について熱く語っていた。二キータの印象とは随分違う。第二弾の若手コンビも、随分ときわどい質問(具体的に書けないほどの)に対しても気さくに答えていた。グレゴワール、大分監督にこき使われたのか:次は男性監督とやりたい。

アンヌと監督

グレゴワールとロクサンヌ
 昼以降は社員各々試写を観たり、新作の情報を集めたり、セールス担当者と打ち合わせをしたりと大忙し。夜には「歓楽通り」「リード・マイ・リップス」などのセールス担当者パスカル(フランス人)と、先日お伝えしたベトナム料理屋で会食。この人、仕事をしているときはおとなしいが、いざ酒が入ると大分饒舌になり、映画業界のいろいろな裏話を教えてくれる。この日はなぜか、カンヌから近い田舎で一番いいのはどこか、の論議に。

だいぶ乗ってきたパスカルさん



16 MAI 2002
2日目。やっと映画を観る。
 今日は朝一から映画の試写。セールス会社が我々のような買付け担当者に売りたい映画を見せるには、メイン会場にある試写室だけではとても間に合わないので、映画祭期間中は普段は一般用に営業している会場近くの映画館をいくつか貸り切っている。マット・ディロン初監督・主演作のプレミア上映ということもあり、会場は各国のバイヤーで溢れていた。

 昼からは日本のビデオメーカーおよび劇場の担当者と2003年度の作品買付けについて打ち合わせ。カンヌには配給会社やジャーナリストだけではなく、劇場、テレビ局、ビデオメーカー、広告代理店などの担当者も多数参加しているので、この期間中は、狙いを付けている作品をそれらの担当者に試写で見てもらったり、情報提供をして、彼らの了解を得てから買い付ける場合が少なくない。特に弊社の場合は公開する劇場が確定出来てから、なおかつビデオメーカーなどと共同でお金を出し合って購入するケースが多い。全員が納得するMG(最低補償額:セールス会社への前払い金)で買い付けるのが配給会社の交渉の腕の見せ所である。

タキコーポレーション下橋氏(左)と浅賀氏

東京テアトル榎本氏(左)と鈴木氏
 20:00から監督週間の「セックス・イズ・コメディ」(監督:カトリーヌ・ブレイヤ、主演:アンヌ・パリロー、グレゴワール・ゴラン)の正式上映を観る。シネマパリジャンはこの映画のカンヌ映画祭期間中のジャーナリストへのアテンドを任されている。映画業界には実にいろいろな仕事があるのだ。監督、俳優の舞台挨拶の前に、「アデュー・ボナパルト」のユーセフ・シャヒーン監督への特別授与式が行われ、ポニーテールのわれらがレテシア・カスタがトロフィーを手渡していた。アンヌ・パリローは「二キータ」出演から大分経っているが、ピタッとしたドレスを纏い、相変わらず抜群のプロポーション。さて、映画は「ロマンス X」の監督だけに、過激できわどいものを覚悟していたが、ポルノ映画の女性監督の奮闘を面白おかしく比較的軽いタッチで描いていた。会場からは終始笑いが起こっており、終映時には拍手喝采の嵐。よかった。

中央の白い服がレテシア
※14日の日記でメイン会場の壁面にシャガール風の絵が飾ってあると書いたが、実は何と黒澤明監督が「夢」のために自ら描いた絵コンテ(映画では未使用分)でした。



15 MAI 2002
今日から本格始動!
 本日から本格的な仕事スタート。ホテルで朝食を取りながら社内会議をし、午前中は観たい映画の上映もないので、海外のセールス会社との打ち合わせに。まず最初に行ったのはメイン会場近くのアパートの一室に事務所を構えいるオランダの会社。「花様年華」から「アタックナンバーハーフ2」まで、良質で時代に合ったアート系映画を多数扱っている。テラスで眼下の地中海を眺めながらのかなり和やかなミーティング。

 夕方には「歓楽通り」主演のレテシア・カスタの日本でのプロモーションについて、彼女のマネージャー兼実の父親との打ち合わせ。ホテルのバーに現れた彼は、一見温和そうなおじさんであったが、しきりに「俺はコルシカ島の人間だ」を連発。ちょっと怖い。あの可憐なレテシアがこのおっさんににコルシカ島で育てられたと思うと複雑な心境である。しかし話はうまくまとまり、彼も「今度は是非コルシカ島に寄ってくれ!」と満足顔。実際カンヌとコルシカ島は目と鼻の先である。

セールス担当者。日本にとても詳しい
 コルシカおじさんとのミーティングを終えバーから出ると、眼前にウッディ・アレンが!オープニング上映作品である新作「ハリウッド・エンディング」の舞台挨拶に出かけるところだったのだ。社員約一名、カメラを取り出し撮ろうとするが、シャッターを押したときには既に人ごみの中に消えていた。せめて彼がもう少し背が高かったら後頭部くらいは収められたかもしれないのに。。。残念。

 気を取り直して、映画人の間でも評判のいいベトナム料理屋「春」で社員一同夕食。8時をとっくに回っているというのに外はまだ陽が眩しい。カンヌの夜は遅いのだ。おいしい料理についビールも進んでしまうが、飲みながらも翌日以降に向けての打ち合わせは怠らない。

この「フォー」がかなりいける



14 MAI 2002
いよいよ明日から映画祭がスタート!!
 いよいよ明日から55回目のカンヌ国際映画祭が開幕する。ウディ・アレンの「ハリウッド・エンディング」がオープニング上映作品なのだが、この作品のジャーナリスト向けのプレス試写がすでに今晩上映され、彼らにとってはもう映画祭は始まっている感じなのかもしれない。

 さて、シネマパリジャンのサイトでも今日からスタートするカンヌ情報は、他の同種のものとは視点を代えて、配給会社の目から見た独自のカンヌのレポートをするつもり。だからこのページには皆さんが期待するような豪華なスターの衣装もゴシップも登場しない。グランプリの下馬評くらいはお伝えできるかもしれないが、でも話題の中心になるのは映画祭のマーケット部門、買付けの話題が主。それでも興味を持ってくれればいいんだけど。
 映画祭前日の今日、シネマパリジャン・スタッフは総勢4人でパリからカンヌ入り。社長・専務・国際部担当・宣伝部担当といった布陣。この4人がまずやることといったら、レジストレーション、つまりマーケット部門の参加申請を済ませること。この手続きは有料で、ひとり数万円の参加料を支払わなければならず、これが弊社のような弱小配給会社にはかなりの負担となる。

 レジストレーションは去年まで映画祭のメイン会場となるグラン・パレの中で行われていたのに、今年からはグラン・パレの脇にある船着場入り口の建物が利用されていた。ここって去年まではアンティークのフランス製ポスターなど売られていた、フリースペースのような場所。つまり無駄なスペースを有効活用したってことなのだろう。しかし例年のような混雑はなく、10分ほどで手続き完了。これさえ済ませば、今日の仕事は終わり。

まだ人気の少ないレジストレーション会場
 メイン会場の壁面には、その年のテーマ・ビジュアルが掲げられるが、今年はシャガール風のイラストが大きな壁面を飾っていた。グラン・パレは中央にオフィシャル・コンペティションの上映会場リュミエールが、向かって右側にある視点部門の上映会場ドビッシーがあるのだが、今年はリュミエールを中心として両側全3面を使用した巨大なものになっていて圧巻。去年までは中央1面だけだったのだ。

 日本の配給会社や興行関係者は今晩カンヌ入りする人が多く、街中は閑散としている。これが本格的な賑わいを見せるのはまさに明日以降。今日のレポートはちょっとシケたものになってしまったけど、明日以降のレポートにご期待あれ。

大きな壁画が登場したメイン会場