『クリクリのいた夏』はシンプルな物語だが、
その中でさまざまなドラマが生まれているんだ


−−『エリザ』から4年が経ちましたが、『殺意の夏』と『エリザ』の間は11年かかりましたね。今回は進展が速かったと言えるのでしょうか?

「確かに僕は、時間をかけるのが好きだ。“仕事には100回手を加えるべし”、これは恐怖や不安と闘うのに役に立つ言葉さ。」


−−『エリザ』のヒットは、あなたとプロデューサーのクリスチャン・フェシュネールとの絆を強くすることになりましたか?

「今回の企画と製作に関しては、クリスチャンは僕に、実に素晴らしい贈り物をしてくれたね。僕はずっと以前からこのジョルジュ・モンフォレの原作を持っていたんだけれど、クリスチャンだけが、映画化のチャンスを与えてくれたんだよ。」


−−『殺意の夏』と『エリザ』の後で、<男の映画>に回帰したというわけですか?

「なりゆきさ。僕は俳優たちが好きだ、女性でも男性でもね。彼らを見ていると夢中になってしまうよ。子供たちを見るのと同じくらいね。彼らには子供たちと同じ純真さがあるんだ。映画から発散される魅力をもたらすのは、往々にして彼らなのさ。演出を彼らに合わせるのは当然のことで、逆はあり得ないんだ。」




−−それにしても、俳優に演技指導はなさいますよね……ちがいますか?

「俳優に演技指導するってことはないね。この映画で僕は、存在感があり、力とテンポのある素晴らしい俳優たちと仕事をするチャンスに恵まれた。僕の仕事は、彼らの美点を表現するための、あらゆる可能性を引き出すことでしかなかったね。」


−−それにこの作品は、あなたにとって『殺意の夏』の脚本家セバスチャン・ジャプリゾとの再会にもなりましたね。

「この関係は、ちょっと特別なやり方で成立したんだ。僕らはそれぞれ別の企画を進めていた。そんなある日、彼にモンフォレの本の話をすると、その本を送るように頼まれたんだ。読み終えた彼は、僕にこれを脚本化したいと言ってきた。彼はその才能のすべてをこの脚本に注いでくれた。彼のすべてを。ジャプリゾは詩人であり、素晴らしいストーリー・テラ−だ。思い通りのところに観る者を運ぶ。その道のりに小さな石をひとつひとつ置いていきながらね。」


−−今回の作品は、これまでよりもずっと静かな感じですね……。

「と同時に、すごくリズムがある。『クリクリのいた夏』はシンプルな物語だが、その中でさまざまなドラマが起きている。これを描くためには1500ショットも必要だったんだよ。」


  



−−あなたの細かいショットをつなぐ手法は、おそらくCMでの経験からくるものではないでしょうか。かなり多くの仕事をしていらっしゃいますよね。ところで『エリザ』と『クリクリのいた夏』の間に、CMは作りましたか?

「いや、とにかく自分の企画に集中したかったので、両方はできなかったんだ。長編映画の準備をしながら、CMスポットを撮るのは無理だよ。だから『殺意の夏』から『エリザ』まで長く時間がかかったんだよ。CMを何本か撮りはじめると、その収入で暮らしが楽になって、月に3本、4本と入れるようになると、もう他のことができなくなってしまう。それに僕も年を取ったからね……。若い人たちに後を譲らなきゃ!」


−−それでは近々、新たに長篇映画の撮影に入るのですか?

「そう!やる気満々!今の僕は、元気一杯だ!でも、いつもそうなんだけれど、良いストーリーを見つけなくてはならなくて、それは容易なことじゃないんだ。言われているのとは反対に、シナリオ作家の数はそれほど多くない……。それから、またジャプリゾと一緒に仕事をしたいと思っている。彼は脚本家であると同時に作家であり、しかも彼は偉大な作家なんだ。」


−−あなたは初期の作品の頃からスコープ・サイズを好まれるようですが……。

「大好きさ。スコープ映像には色んなものを入れられるからね。フレームを決めるとき、ずっとフラストレーションが少なくて済むんだよ。」




−−フィルムにして8万5000メートルも撮ったそうですが、多くありませんか?

「決して後悔をしてはいけないし、使える機材は最大限使うべきさ。もちろん後からも時間が必要になるし、僕は必要な時間を得ることができたからね。CMの仕事をして、僕はアヴィド(バーシャル編集)のシステムに出会った。この最新技術での編集は実に素晴らしい。それに、とても速く、色々なことを試すことができるんだ。この機械を使うと、短時間で良い解決策を見つけることができるというわけさ。昔はいつも不安で、それに正直に言ってフィルムを何度もはがしたり、現像をやりなおしたりするのは面倒だった。しかも、いつでもそれができることではなかったしね。今はボタン操作で出来上がりさ。同時に、その前の映像もメモリーに保存することができるんだ。」


−−つまりショットの数から見て、あなたは短いショット・シークエンスを愛好する方なのでしょうか?

「必要ならそうするし、必要なければ使わないっていうだけのことさ。僕はいつも2台のキャメラで撮影をする。ひとつは固定キャメラ、もうひとつはステディカムだ。でも僕は、俳優とか何かのまわりを3周したりしてなんかして、ステディカムを無駄に使ったりはしないよ!僕は人にそれとわからない演出を心掛けているんだ。画面の中に効果を意図する監督の努力が感じられたなら、父が言っていた<詩的リアリズム>の概念がブチ壊しになってしまうからね……。」